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業種業態ソリューション研究会

少子高齢化に伴う人口減への対応

日本人が経験したことのない人口減少が始まっています。どの業種・業態においても共通の課題である従業員確保対策について考察します。

1.我が国の現状
 総務省の人口推計によると、2010年の国勢調査では、総人口1億2,806万人、生産年齢人口割合63.8%、高齢化率23.0%だったが、2060年には総人口6,674万人、生産年齢人口割合50.9%、高齢化率39.9%になるとされています。
 小生の関与している中小企業(産業用機械製造業、金属加工業、鉄筋工事業等)において、若年労働者の確保が難しく、従業員の高齢化が進み、技能の継承が危惧されています。大企業では技能承継への取組が真剣に行われていますが、中小企業ではその余裕がなく対応が出来ない事態となっています。
 建設業界では、震災復興と東京オリンピック開催に向けての需要増大で、人手不足が深刻な問題となっています。震災復興現場では、東京オリンピックの開催が決まってから、東京方面に引き上げる作業員が急に増えおり、復興現場は大変な事態に陥っているとのことです。そもそも、バブル経済崩壊以降、建設業の現場作業員は減少傾向を辿ってきましたが、民主党政権が「コンクリートから人へ」などといって公共事業を大幅に削減したことにより、ざっと700万人いた建設技能者は、2013年には338万人(総務省労働力調査)まで半減しています。
 バブル経済崩壊後の長引くデフレと円高により、経済活動は停滞し、製造業の海外進出も影響して、高い失業率が続いてきました。安倍政権が誕生し、アベノミクスによりデフレに歯止めが掛かり、円安が進行し、漸く前途に曙光が見えて来て、失業率も改善に向かっているようです。

2.外国人雇用の現状
 厚生労働省の発表によると、2013年10月末現在の外国人労働者数は717,504人で、前年同期比で5.1%増加しています。その原因は、政府が進めている高度外国人材、留学生の受入が進んでいることに加え、雇用情勢が改善傾向で推移している為と考えられます。国籍別では、中国が最も多く、303.866人(全体の42.4%)、次いでブラジル95,505人(同13.3%)、フィリピン80,170人(同11.2%)、ベトナム37,537人(同5.2%)の順です。在留資格別では、「専門的・技術的分野」の労働者が132,571人で、前年同期比6.7%の増加。また、永住者や永住者を配偶者に持つ人など「身分に基づく在留資格」は、318.788人で、前年同期比3.3%の増加となっています。
 近い将来、数十万人単位の人手不足が見込まれる介護の現場に対し、経済連携協定(EPA)に基づき、インドネシヤ、フィリピンなどから介護福祉士候補が来日、3年間の研修後、2012年実施の国家試験に挑みましたが、外国人受験者の合格率は38%(日本人を含む全体では64%)と低く、マスコミに大きく取り上げられたことはご存じのとおりです。日本語習得が壁となっているようで、制度の改善が望まれています。
 因みに、在留外国人数は、法務省の発表によると、2013年6月末現在、205万人(中長期滞在167万、特別永住38万人)で、そのうち労働者とカウントされているのは35%という計算になります。

3.政府の考えている対策
 日本経済新聞によると、2014年4月4日に行われた「経済財政諮問会議」と「産業競争力会議」の合同会議で、安倍首相が「外国人人材の活用の仕組みを検討して頂きたい」と指示したとあります。外国人活用を巡っては、国内賃金の低下や治安への影響などから慎重な意見もあり、これまで研究者や経営者など高度人材を中心に受入体制を整えてきましたが、安倍首相は「移民政策と誤解されないような配慮も必要」と念を押しつつも、外国人材の受入に従来よりも積極的な姿勢を見せたとあります。
 議員より、家事分野の規制緩和の提案や、建設業などに限っている外国人技能実習制度の対象に介護分野を加える案が出されたとあります。家事分野では、今後働く女性が益々増え、共働き世帯による、代行のニーズが高まり人材不足感が強まるのは必至です。
 この会議が、省庁の垣根を越えて、一刻も早く政策を決め、実行に移されることを切望します。

4.おわりに
 小生は、バブル時代、建設関連工事業を営む会社の社長を務めていましたが、人手不足を補うため、ブラジルの日系人を雇用したことがあります。労働ビザでの入国(滞在5年以内)であったので、少しでも稼ぎを多くと、祭日・休日勤務・残業を希望、本当に良く働いてくれたことを思い出しました。
 島国の単一民族である我が国では、まだ外国人に対する偏見が残っていることは事実です。移民問題で苦しんだドイツの事例などを良く研究し、人口減少時代に国力を維持するために、外国人と上手く付き合って行くかの方策を考えるべきです。
 一方で、海外在留日本人の数は、年々増加2011年10月現在で118万人となっています。海外留学を希望しない若者が増えていると聞きますが、この急速にグローバル化が伸展している時代、人口減少時代に突入した日本の将来を考えるとき、若者が海外留学を通じて、外国への理解を深め、海外の国々との共存共栄を図る必要があります。
2020年の東京オリンピックを節に、胸をはって外国人と付き合おうではありませんか!
以上
(味香興郎)

植物工場の最近の動向について

 野菜などの園芸作物は、長期保存が利かず、周年出荷を可能とするためには施設園芸が欠かせません。施設園芸は平成11年をピークとして耕地面積が減る一方、近年は高度な栽培ノウハウを盛り込んだ植物工場が増えつつあります。
 今回は、昨今脚光を浴びつつある植物工場についての動向を説明します。
1.植物工場とは
 農水省のHPでは「植物工場とは、施設内の温度、光、炭酸ガス、養液などの環境条件を自動制御装置で最適な状態に保ち、作物の播種、移植、収穫、出荷調整まで、周年計画的に一貫して行う生産システムのこと」としていますが、今のところ公式な定義はないようです。
2.植物工場の種類
 植物工場は、光をどこから得るか?によって大きく三つに分けられます。青木先生1
①完全制御型(人工光型)
全ての光源を人工光に依存するタイプの植物工場です。
②太陽光型
光源をすべて太陽光に依存するタイプの植物工場です。
③太陽光併用型
太陽光と人工光とを併用するタイプの植物工場です。
3.植物工場の課題
 一番の課題は、植物工場は消費者の要望に基づいて開発された技術ではないので、消費者に対する直接的なメリットが見出せていない点です。
 そもそも植物工場とは、天候に左右されず安定した収量を確保したいという農業者の悲願を解決すべく生み出されました。このため、植物工場野菜が欲しいという、消費者からの求めはなく、そう言わせるだけの魅力も打ち出せていないのが現状です。他にも、コスト高、育てられる作物が限られるなどの課題があります。
4.植物工場の利点
 生産者目線では植物工場の利点は天候に左右されず安定的な収量が生産できるという点に尽きるのですが、消費者目線ではキャッチーで植物工場そのものが話題になり評判を呼びうる、という点が大きな利点と言えます。
 例えば、サブウェイの野菜ラボ(http://www.831lab.com/yasai_lab/marubuild.html)では、店舗の中心に植物工場のミニユニットを配置し、目新しい販促ディスプレイとして利用しつつ植物工場の普及を図る一つの仕組として活用しています。
また、大和ハウスが「アグリキューブ」という植物工場ユニットを外食産業向けに発売しています。これは地産地消ならぬ【店産店消】という流通経路を短くすることでコストダウンを実現すると同時に新鮮な食材の提供の実現を目指しています。https://www.daiwahouse.co.jp/release/20120321110106.html
以上のように、目指すことや在り方に応じて規模や機能を変えて作り込めるのも、植物工場の一つの利点と言えるかもしれません。
5.最近の技術
 ①栽培技術
 植物工場は、発芽から収穫までの間の植物の生育全体を、人工的な環境内でコントロールするため、さまざまなセンサーや制御装置を駆使して管理します。正に日本のお家芸の一つですので、さまざまなメーカーから工夫を凝らした生産管理システムが発売されています。
 また、各種センサーそのものや光源についてもメーカー各社が独自の開発を進めています。LEDを光源に使った植物工場もその一つで、植物の生長ステージに応じて光の波長青木先生3の成分を変え、より成長速度を速め生産性を高めようとしています。写真のようにピンク色の波長を強め、成果を出している植物工場もあります。
 ②機能性野菜
 植物工場では、栽培方法や環境をコントロールすることで、特定の栄養分などを強化することによる機能性の高い野菜の産出が可能です。現在、低カリウム野菜や低硝酸塩野菜、高ビタミン野菜などが研究・開発され、一部出荷も始まっています。
機能性野菜は、腎臓病患者や高齢者、子どもを持つ親などに高いニーズが見込まれ、さらなる技術開発が望まれる分野です。
露地栽培では環境をコントロールしきれないので機能性野菜の栽培は難しく、この分野は植物工場にとって一つの進むべき道であると言えるでしょう。
(青木洋人)

旅行業の新たな業態 ― ソーシャル旅行サービス

 最近、旅に出かけられたことはありますか?それはどなたとでしたか?

  会ったこともない他人同士で旅を企画し、実際に旅に出かける。そんな新しい旅行スタイルが広まりつつあります。それは、「ソーシャル旅行」といわれるもので、ユーザーが通常の旅行会社では企画されないような独自のツアーを企画し、その企画に共感した他のユーザーが集まり、WEB上であれこれと意見を交わしながら詳細を決めていく。そして一定数の参加者が集まれば、最後はその企画が現実のものとなり、実際に見知らぬ者同士で旅に出るというものです。「旅行会社のツアーでは物足りないけど、自分一人で旅にでるのはちょっと寂しい」、「友達と行くにもお互いの休みが合わない」といった旅行者にとって、オリジナルな旅の企画と、旅を通じた新しい出会いといった要素が多くのユーザーを惹きつけ、注目を集めています。

 このような新しい旅行スタイルを提供するのは、「ソーシャル旅行サービス」といわれる新しい業態(WEBサービス)で、ユーザーが旅を企画し、ユーザー同士で計画を膨らませるWEBサイトを運営しています。従来の旅行会社がパッケージツアーを企画した場合には、それを販売するために、店舗を置いたり、パンフレットを配布したり、その他の販売促進策を実施することで、旅行の参加者を集める必要があり、これにはコストがかかります。しかし、ソーシャル旅行では、実際に旅行に行こうという人たちが自らが行きたい旅行のプランを練り上げるので、すでに参加者が決まっており、販促によって参加者を集める必要がありません。そこで、WEBの運営会社が、ユーザーたちが練り上げた企画を参加者とセット(送客)で従来の旅行会社に提案、販売することで、ツアー費用の一部が同社の売上となる仕組みとなっています。そして、提案を受けた従来型の旅行会社では、その企画・設計に応じた交通手段や宿泊等の手配を行います。

 このように、ソーシャル旅行サービスは、従来の旅行会社の「代替」ではありませんが、提案を受け、企画・設計通りの手配を行うだけの旅行会社では、付加価値は生みづらいと言えます。これまでにも、旅行者による個人手配、LCC(ローコストキャリアー)の台頭による旅行会社への販売手数料の撤廃など、旅行会社の収益構造が近年大きく崩れてきたことは「業種把握読本」や過去のコラムでも述べてきましたが、このソーシャル旅行サービスの広がりも、今後の旅行会社の収益構造に大きく影響を与えるものと思われます。

 今後、自社で魅力的なツアーを企画できない旅行会社はますます利益率の低下を余儀なくされるものと思われます。そこで、販促費や一般管理費を極限にまで抑えながら、ソーシャル旅行サービスを活用していくのか、もしくは手配における専門性を磨き武器とするのか、または東京オリンピックに向けて増加が予想されるインバウンド旅行に集中・転換していくのかなど、旅行会社において今後の戦略方針がより一層重要になると思われます。
犬飼先生

 

 

 

 

 

 

   出典 trippiece.com 「ラオスで象使いになろう」より

(犬飼あゆみ)

中小企業の生き残り戦略、「自己変革」を起こすには

 中小企業白書2013年では、「自己変革を遂げて躍動する中小企業・小規模事業者」というテーマで、「起業・創業」、「新事業展開」、「次世代への引継ぎ(事業承継)」の3つのステージ、情報技術の活用という手段を含めた4つの切り口で、「自己変革」の重要性について触れています。実際の企業支援の経験からも、企業自ら変革し続けていくことが、中小企業が成長し続け、生き残るために必要であると確信しています。
 企業のご支援をしている筆者の経験上の見解にはなりますが、実際に自己変革をし続ける組織になる具体的なポイントを見つけるためには、厳しい外部環境、業界であっても、好業績、成長している、勝ち組企業の取り組みから学ぶことが、重要だと思います。勝ち組企業から、2つのポイントが挙げられると思います。

①常に組織全体が難易度の高い仕事に取り組む。例えば、新規営業を徹底させる。しかも、自社より、規模や要求レベルの高い上場企業や規模の大きな企業をターゲットとする。
②外部の資源をうまく活用し続ける。例えば、OB人材や外部人材をうまく活用する。新たな商品開発に自社の人材ではもっていないノウハウを活用するために、参入したい異業種から人を採用する。

①や②を継続的に取り組んでいくことで、
・チャレンジすることがふつうになる
・要求度の高い顧客への対応力、提案力の向上
・新たな視点や価値を受け入れ思考の組成
・新たなものを受け入れる風土が根付く
などの組織的な習慣や力が構築されるのではないでしょうか。
 結果、顧客や市場のレベルの高いニーズに対応できる、既存の自社の製品や商品、サービスを、新しいものにして、提供し続けることができ、好業績、成長が果たせるのだと思われます。

 2つのポイントを経営者が幹部や従業員に示し、実際の行動に落とし込ませることは、簡単なことではないと思います。言い古されたことになりますが、経営者が、事業の社会的な意義やビジョンを示し、幹部や従業員に対して様々な方法で試行錯誤しながらアプローチを続ければ、実際の行動へとつながると思います。私の尊敬する師の言葉を借りると、まさしくそれは「経営力」であり、中小企業にとって最大の競争力だと思います。
(澤田 兼一郎)

アパレル企業の創業支援

1.最近の開業率と廃業率
 最新版の中小企業白書によりますと、わが国の2011年の有雇用事業所数による開業率は4.5%、廃業率は3.9%となっています。2009年に開廃業率ともに4.7%と拮抗しましたが、2010年、2011年と開業率が廃業率を上回っています。ただし、同時期のアメリカ、イギリスでは開業率、廃業率ともに10%前後を維持しています。

2.アパレル産業の創業
 総務省の統計で見る業種別の開廃業率(2006~2009年)では、製造業、卸・小売業、サービス業全ての廃業率が高く、開業率を上回っています。さらにアパレル関係の創業は非常に少なく感じます。もちろん地域特性もありますが、全体に減少傾向です。これは7年前なのですが、たまたま担当した区の創業相談で、元繊維商社勤務の方にお会いしました。中国でのOEM生産の担当が長く、勤務先が業績不振で吸収合併されるため、経験を活かして独立、創業したいというご希望でした。

3.創業時のビジネスモデル
柴原先生1  当時、輸入浸透率(輸入/国内消費)は、数量ベースで90%、金額ベースで50%まで高まっていました 。輸入相手国は、圧倒的に中国が主力、高いシェアで日本市場を席巻しています。創業者の強みは、北京に2年間留学した語学力で、国内アパレル企業から生産を受託、中国の縫製工場で生産、これを納品するというOEM業態です。

 

 

 

 (上海市、南京東路)

4.その後の展開
柴原先生1 創業後数年は好調だったのですが、中国国内での人件費の上昇、為替の変動などの要因から業績が悪化します。さらに、リーマンショック、東北大震災等の影響で日本の国内市場は冷え込み、扱い商品の婦人子供服市場は、1990年の約9兆円から2009年には約5兆6,000億円まで縮小します。その後2012年までは、横ばい傾向です。
 2010年の時点で自社のビジネスモデルが崩壊、国内での受注価格と中国での生産価格が逆転します。中国で内需振興政策への転換が言われだしたため、中国の内需に注目、製造卸として上海の商業ビルに約20坪の拠点を構え営業を開始します。結論から言いますとこれは無理がありました。無名のファクトリーブランドの品揃えでは商売になりません。2012年、上海を撤退しています。
(上海市、アパレル素材百貨センター)

5.国内での再出発
 赤字決算が続き資金繰りも厳しい中、円滑化法に助けられて、借入金返済条件の変更を受けながら次の事業を探しました。創業者の年齢はまだ、40歳代前半で、めげないこと、やめないこと、さらにあきらめないことを信条に頑張りました。 
 人脈の豊富なことが強みとなり、様々な案件が出てきましたが、現在の収益事業は、輸入アパレルのネット販売、知人・友人との共同事業である化粧品開発・販売、中国と日本との物流支援などとなっています。
 26年度の日本の重要施策として、創業の促進があげられ、25年度には創業補助金の新設など創業支援に関する予算が増額されています。創業のすすめは盛んになっていますが、創業は易く継続は難いことも事実です。欧米並みの開業率10%の目標も大事ですが、いかに廃業率を下げるかがより重要と思います。よりきめの細かい支援が必要となります。
(柴原廣次)

自転車を取り巻く環境の変化

 最近の10年間の自転車の販売台数の推移をみると、年ごとに若干の増減はあるものの900万台~1100万台の間でほぼ安定しています。しかし、社会環境の変化で消費者ニーズが大きく変わり、これが市場環境を変化させ、業界も変えつつあります。最近目につく環境の変化には次のようなものがあります。

  かつて自転車の9割以上は実用品として購入されたため、耐久性、機能、材質の品質等の評価で市場価値が決まりました。そしてファッション性は評価をされるものの、その評価が市場における付加価値を生み出す可能性は少ないものでした。
中津留先生1しかし、遊び、スポーツなどの用途が広がったことで、最近はファッション性が重要な価値を持つようになりました。ファッションにコストを掛けてもそれを価格に転嫁でき、これが市場価値を生み出す環境になったため、ファッション性の高いものが生産され、その販売が増えてきました。これに合わせて販売店の陳列方法や販売方法も変わり、最近はお洒落な店舗が目立つようになりました。(一財)自転車産業振興協会のデータで平成22年以後の1店当たりの販売台数の推移をみると、カテゴリー別の販売比率も販売台数はほぼ変わっていません。また販売価格もスポーツ車の平均単価が若干上がった程度で、他はほぼ横ばいです。このことから、自転車は成熟市場であり、定量的にはほぼ変わっていないといえます。しかし、質的には大きく変化しています。実用品時代は価格が重要な購買基準になっていたため、価格競争が激しく、利益の取りにくい商売でした。ところが最近のようにファッション性などの知的な価値が評価基準になると、創意工夫により利益を生み出すことが可能になったため、新しいコンセプトの店が多数参入するようになりました。この影響で市場では新陳代謝が活発に進んでいますので、数年後には業界環境も大きく変わると予想されます。

 一方で、自転車を通勤に使う傾向が顕著になっいます。多くの人々が「自転車通勤はカッコいい」と感じるようになったためです。このため、通勤にもファッション性の高い自転車を求めますので、この分野での需要は増加すると予測します。また業務等で都心の近距離間を移動する場合の交通手段として自転車が注目されており、この需要も増加するとみられます。
中津留先生2ただ、地価の高い都心に広い駐輪場を確保することが難しいため、個々の所有でなにして共用する考えが広まりつつあります。それにしても、一定のレンタサイクルを駐輪する場所の確保の問題がありますが、採算的にこれが解決できる見通しが立てば、今後急速にこの事業が広まる可能性があります。    
 なお、自転車交通のインフラ整備として、各地で自転車専用道の建設が進んでおり、業界にとっての追い風になっています。
 一方、国あるいは自治体が交通ルールに関する法制度を整備しつつありますが、東京都では平成25年7月に「自転車条例」を制定し、従前に比べてきめ細かいルールを設定しました。                              
(中津留 準)

交通事故から「国民医療費」を考える

 10月下旬、携帯が鳴りました。妻からで、「自転車に乗っていたら車が飛び出してきてぶつかってきた」といいます。「現場で膝が痛いまま動けない」。私は「必ず救急車を呼びなさい。自宅近くの病院に連れて行ってもらいなさい」と伝えました。しばらくして「○○病院に運ばれた」というので、仕事中でしたが駆けつけました。すると、軽いと思われた怪我が、実は全治2か月の骨折とわかりました。

 数日後、妻のもとに大手M海上火災保険会社の男が来ました。彼は「あなたにも責任があるから健康保険で、自分で治療してください」と、とんでもないことを言って帰りました。自転車通行可の歩道上に飛び出したのは明らかに車です。そこで、その男を呼び出して、話を聴いてさらに驚きました。「交通事故の8割は健康保険で治療されています」。

 あまりにめちゃめちゃな話だったため、今度は彼の上司に出てもらいました。喫茶店で会い、「交通事故の8割は健康保険で治療されているとは、どんな資料や根拠があるのか」と迫りましたが、ノラリクラリして答えません。

 実は、この日の前に日経新聞(11月2日)に次のような記事が出ていました。「2011年度に自動車事故で健康保険を利用した人は10.5%にとどまっている(原文)」。記事は「一般に健康保険を利用した方が、医療費は少なくて済む。」と続きます。私はこれを社会保険労務士として興味深く読んでいました。この損保会社関係が書かかせたと思われるような「提灯記事」には驚くばかりです。10.5%でも多すぎるのではないでしょうか。

 現在、医療費はうなぎ上りで、健康保険関係はどこも赤字です。一方、加害者が明確な交通事故の医療費まで健康保険を使わせるのなら「損保の自動車保険は丸儲け」ではないでしょうか。大手ですらこの程度なら、その他はどうなのかと心配になります。それにしてもM海上火災保険会社のウソは、怒りを覚えます。

 結局、妻は38日間の入院となり、退院した現在でもリハビリ通院を行っています。杖はまだ離せません。しかし、病院の対応は素晴らしいものでした。若い看護師、ヘルパーさんが活き活きと働き、患者の話をよく聞いて、アドバイスとサポートをしていました。病院でありながら、看護師や従業員が明るく元気で、職員満足=ESが感じられました。

このような医療現場の大きな変化を「入院患者の家族」として体験させてもらったのは貴重でした。この病院は、「約200床の地域医療支援病院」ですが、「日本医療機能評価機構認定」の病院でもあります。

この病院の体制が、家族としてありがたかったのは、病室の遠くない廊下の一定の場所を「携帯電話使用可」にしてあることでした。妻と2人暮らしで出張が多い私には、車いすの妻と連絡を取るのに大変に助かりました。

医療機関のコンサルタントとして、今回の妻の入院は、医療の質や患者のサポートだけでなく、その「家族との連絡方法」までの細かな配慮が良い勉強になりました。

さて、12月20日の新聞記事では、2014年の予算編成では「診療報酬」の見直しをプラス0.1%と報じています。それが問題のように報じるマスコミもあります。確かに医療費は拡大を続けています。

 しかし、同日の記事に、「東電の融資枠9兆円」と掲載がありました。ゼネコンによる「放射能を帯びた落ち葉を川に捨て、また除染を実施しているように見せかける作業」が告発されています。そんなところに国民のお金を使うなら、国民が健康を取り戻すために、若い人も頑張る医療現場に使うお金や融資枠は、生きたお金ではないでしょうか。

(手島伸夫)

2015年度介護保険制度の見直しについて

 介護保険制度は2000年度に始まりました。介護報酬を改定する3年ごとに区切ると、今度の改定は5期目となる2015年度で、政府は介護度の軽い要支援者を対象とする介護予防サービス事業を、自治体に権限移譲する法案を国会に提出しました。
 消費税が上がったとしても、それを上回るペースで増えていく社会保障費を抑制するため、介護度の低い要支援者向けのサービスについて、市町村に権限を移譲し、単価を低くしたり、本当にサービスの必要な利用者を絞り込むことが狙いです。
 単価を低く抑えるために国が提案しているのが、ボランティアの活用です。元気な高齢者などに担い手になってもらうということでしょうが、これにはかなりの無理があります。
在宅サービスについては、株式会社等の民間企業が5割以上を占め、それらの組織の収益を確保するために、市民がボランティアに参加するとは到底考えられませんし、NPO法人等の非営利活動組織であっても、今まで職員が有償で行っていた仕事をボランティアに任せるとは思えません。
 ボランティアを活用するのであれば、サービス内容や利用者の条件をはっきりと有料サービスと分け、ボランティアの管理については、社会福祉協議会などのボランティア支援団体に委託し、高齢者のワンストップ相談窓口である地域包括支援センターと連携しながら、あたらな仕組みを構築していくことが必要でしょう。
 それでは、事業者はどのような対応を今から取るべきでしょうか。
 介護事業者最大手のニチイ学館は、介護保険外のサービス強化に動いています。介護保険対象外のサービスを扱うヘルスケア事業本部を設置し、今後減少していく介護保険適用サービスを補い、介護サービス全体では売り上げが変わらないようにしています。
 2013年1月~10月の老人福祉・介護事業の倒産件数は、44件(前年同期比62.9%増)に達し、介護保険法が施行された2000年以降では、過去最多のペースで推移しています。サービス別では訪問介護事業は過去最多を更新しており、規模別では従業員5人未満の小規模事業所が7割となっています。
 今後の介護報酬改定でますます小規模事業所には厳しい時代が来ることが予想されます。機能回復訓練の導入や、認知症専用サービスの提供、こだわりの食事の提供など、いかに独自性を打ち出していけるかがポイントとなるでしょう。
原先生

 

 

 

(原 賢治)

飲食店最新動向「プチ贅沢」

 2012年12月の総選挙で“デフレ脱出”を掲げた自民党が政権奪還しました。さらに7月の参院選も自民党が勝利を収めたことで、国民は、円安や株高などアベノミクスを実感しています。国民の心には「プチ贅沢」の意識が生まれ、「価値を感じる商品には、お金を払う」という傾向が強くなりました。そのため、百貨店の高額商品がよく売れていると聞きます。
 サラリーマン・OL層にも、「プチ贅沢」の意識は生まれ、飲食業界に少しはプラスに働いています。ここ数年で最高額を売り上げたという飲食店も増えたと言われています。
 この「プチ贅沢」に乗って成長したのが、最近、飲食業界で最大の話題になっている、立ち飲み屋の「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」です。「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」のコンセプトは、「3万円の料理を3000円で提供」することです。
 具体的には、立ち飲み店業態で、ミシュランの星付きレストラン出身の調理人が、高級店の料理を手頃な価格で提供しています。立ち飲みにすることで、回転数を増やし、高級なワインや料理を手頃な価格で提供することを可能にし、狭い店舗でも出店可能になりました。そして、飲み方のスタイル自体が演出となり、「かっこいい」、「おしゃれ」と映り、リピーターを集めています。
 「プチ贅沢」の例はこれに終わりません。
 「全や連総本店東京」(全や連:全国やきとり連絡協議会、運営(株)ひびき)は、大手町サンケイビル地下2階に2013年3月開業150席の日本一の焼き鳥です。料理は、独自のスタイルを持った7大やきとりタウンから集まった全や連の加盟7店から味を楽しめるようにしています。やきとりに使う「たれ」は全て各店の地元から運び、肉など食材も同じものを使っています。価格も平均客単価2,300円と手頃です。
 新橋や神田等の近くの飲食街と競合して、集客が難しいと言われる場所に立地していますが、一度入店したお客様は、全国の焼き鳥や珍しい料理を安く食べられるお得感に、また別のお客様を連れて来てくれます。これも、「プチ贅沢」の影響と思われます。

山下先生

営業時間の常識

数年前、東京にある創業20年のパン屋さんのコンサルティングをしました。クライアントからの要望は、ただ一つ。「お客様に、できたてのパンを提供したい」。

営業時間は、8時から20時。場所は、都心から電車1時間と、さらにバス10分、40年前に建てられた公営団地の一角にあります。周辺住民の朝は早く、都心への通勤のため、朝5時半から、バスや徒歩で、駅への移動を始め、乗降客ピークは7時前。その後、お店が開店する時間帯には、店の前は、幼稚園や保育園送迎のお母さんや、朝散歩のご年配者で賑わいます。

直近の10年くらいは、単身世帯、つまり大学生や若手会社員が増加していました。

「焼きたて」をこだわりにしていましたが、午前中に購入して行くお客様には、早朝に焼けたパンを提供しており、夕方は、焼きたてパンを購入されますが、食すのは翌朝のため、やはり「焼きたて」は食べてもらっていません。

さて、みなさんなら、このパン屋さんの要望に対して、どんな提案をするでしょうか?

私は、営業時間の変更を提案し、早朝5時から15時までの営業を平日限定で試してみました。店では過去に7時開店で営業していた時期もあり、早朝営業は集客効果がない、と敬遠していました。しかし上述のとおり7時では、すでに周辺住民の朝食や活動ピークを過ぎていることを説明しました。そして、出勤時間のビジネスマンを獲得するために、早朝8時までホットコーヒーをサービスすることにしました。

結果は、このお店が今もこの時間で営業を続けていることから、成功、と見て良いのでしょう。

さて、旅館・ホテル業も同じではないでしょうか。あるビジネスホテルが、夜行バスで早朝移動してくるお客様を対象に、早朝滞在(5時から11時)として、通常宿泊費の半額で提供していました。仮眠もでき、さらに温泉大浴場も使えます。夜行バスを降りた客の何人かは、吸い込まれるようにホテルへ入って行きました。

自施設の魅力と、それを目的に来て下さるお客様の行動パターンを考えて、営業時間やサービス時間を見直すことは、ときとして、最も効果的で、もっともお金のかからない対策の一つになるのです。
(坂本 洋)

 

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